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最近読んだ本

Posted on:2018-05-25 at 12:00 AM

Kindle Oasis 最高(挨拶)

最近 Kindle で読書した本が溜まってきたので感想を書いておく。細かい感想はまた別で書くかもしれないけどとりあえず簡単な全体的な感想を。

銃・病原菌・鉄

ゼロ年代の 50 冊」のベスト 1 にも選出された 1 冊。

大学生に勧める本のランキングにも入ることが多い。


なぜヨーロッパ周辺の文明とそれ以外の文明で文字や社会システム、科学等の発展に差が生まれたのか。


本書では、著者の友人のニューギニア人のヤリが持ったこの疑問に答えていく。

端的にいってしまえば

つまり、究極的には、ヨーロッパ人とアフリカ人は、異なる大陸で暮らしていたので、異なる歴史をたどったということなのである。

ということになるがそこで著者は「なぜ」異なる歴史を辿ったのか、そこに必然性はあったのかということについて狩猟採集から食糧生産への歴史、地理的条件、生態系、地政学的な話まで学際的に踏み込んで根本的な原因を探ろうとしていく。

この本のいいところはそういった科学的な誠実さであり、ありがちな歴史の解説や仮説の立て逃げだけでなく、仮説 → 検証のプロセスを繰り返すことで究極的な歴史の原因を探ろうとする点にある。

検証結果に対して検証の妥当性を検討し、検証結果から新たに生まれた疑問に対してはまた仮説を立てて検証し、科学的誠実さをもって歴史を紐解いていく。こういった科学的態度が大学生に勧めたい理由なんだろうなと思った。

1万2千年にも上る歴史をジェットコースターのように駆け抜けていくだけあって、ところどころ仮説や検証の甘さはあるものの概ね納得感のある検証になっている。

ともすればその地域に「今」住んでいる人の属性をもって我々はなんらかの必然性を推測してしまうが、歴史を知ることによってその偶然性を知ることが出来る。このことは次に挙げるサピエンス全史でも説かれているテーマだ。

たいていの社会政治的ヒエラルキーは、論理的基盤や生物学的基盤を欠いており、偶然の出来事を神話で支えて永続させたものにほかならない。歴史を学ぶ重要な理由の一つもそこにある。

全体としてかなり淡々とした文章でウェットさはほとんどないけど、主観を廃した科学的手続きの一環だと思うと納得が行く。

サピエンス全史

上巻だけしか読んでないがそこまでの感想。

銃病原菌鉄とセットで紹介されていることが多かったので興味を持って読んでみた。

銃・病原菌・鉄から影響を受けていることを著者が公言しているだけあって、歴史をなぞる方法論は似たものを感じる。

ただちょっと思っていたのと違ったのはこれはどちらかというとビジネスパーソン向けの警句集みたいなところがあって、仮説 → 検証の科学的手続きはそこまで重視されていない。

著者の主張自体には面白いところがあるものの、テーマが多岐に渡るため個々の主張に対しては細かい論証などはあまりなく断定的な物言いになっている。

だからといってこの本が提起する問題の価値が薄まるわけではないけど、個別のテーマについてはそれぞれちゃんと個別のテーマの本を読んだ方がよさそう。

下巻はまだちょっと読むか分らない。

遺伝子-親密なる人類史

これもまだ上巻しか読んでないがそこまでの感想。

これはこの3冊の中では最もウェットな文章ではっきりいってエモい。

ところどころ著者自身のバックグラウンドも絡んだエモい表現と真面目に歴史を語るパートの対比が心地よく、良く出来た小説を読んでるような気分になる。

遺伝学の歴史を19世紀から現在まで辿るというものだが、遺伝というと高校の授業でメンデルのえんどう豆の話が出たな〜ぐらいの認識だったけど、この本を読むとメンデルの偉大さに気づく。メンデルの法則だけの一発屋かと思っててごめん。同時代のダーウィンが目立ちすぎというのもあるけどそれ以上の偉人だ。

前半はダーウィンとメンデル中心にした遺伝学の創始物語、ゴールトンと優生学、各国における優生学の利用、後半は DNA の二重らせん構造の発見、クローニング、遺伝子の科学的操作といった話が中心になる。

前半では忌まわしき優生学と統計学の研究の関連についての話があったが、改めて科学倫理の重要さを痛感した。今では考えられないが極めて理性的な判断で断種などが行われていた時代が100年もしない昔にあったということ。そして日本でも1996年まで優生保護法という名の断種法が存在し実際に断種が行われていたこと。

優生学というのも何も狂人が始めたものでもないし、ナチスが勝手に考えだしたものでもない。今では機械学習にも利用されている統計学の平均への回帰や相関係数という概念を発明したゴールトンが提唱したのだ。

その後は歴史が知る通りナチスのホロコースト政策によって多数のユダヤ人が優生学の名の下に犠牲になった。理性が簡単に大量殺戮へ結びつくということをはからずしも理性が自ら証明してしまった。

本書の後半では遂に人類の遺伝子まで操作出来る段階になるがそこでは過去の反省を元に倫理が強く求められ、アシロマ会議では研究の一時停止まで求められるようになる。

遺伝関連の本は初めてだったため正直内容は難しかった。が、人類のアイデンティティさえ変えてしまうことさえ可能なとてつもなく大きな力を手にしていく歴史を見ていく様はスリリングで一気に読めてしまった。

下巻も読んでみたい。