原田信男著、和食とはなにか 旨みの文化をさぐるを読んだ
最近なんか文化史とか人類史とか歴史物にハマってる。その一連の流れでこの本も読んだ。
本書では古代の狩猟採集民が狩りから農耕生活へと移った 1 万年前から現在に至るまでの和食の文化史を紹介している。
日本食を紹介というと安易な日本食礼賛のようなものが思い浮かぶけど本書はあくまで日本食の文化史を辿るもので、どういった必然性あるいは偶然性を経て和食が形成されているのかを紹介している。
あくまでも米は、アジアモンスーンという季節風が吹いて、雨季にたくさんの雨をもたらせてくれる地域での栽培が適していることになる。つまり米には大量の水が必要であるから、その水に 棲む魚とセットになった食文化が展開することになる。
おおまかに言えばアジアモンスーン地帯に適した稲作地帯と海と山に囲まれた地形、中国が近いことによる精進料理の輸入が和食にとって決定的な出来事で、偶然日本という緯度での気候に稲作文化が適していて、偶然海と山が多いことによる水資源の豊富さが和食という特色を生み出したことになる。
ジャレド・ダイアモンドが「銃・病原菌・鉄」で農耕民族が狩猟採集民を滅ぼしたことを示したように、食の歴史はその社会が辿った歴史そのものであり、普段あまりにも日常行為な「食」に意識を向けるということは歴史を意識することでもあり、その偶然性を意識することでもある。
もし、日本の緯度があと 5 度ずれていたら、もし中国が近くになかったら、もし天武天皇が肉食禁止令を発しなかったら、もし山や河が身近になかったら今の和食というものは存在しなかったかもしれない。
なぜ日本の主食は米なのか。なぜ醤油を使うのか。なぜ味噌を使うのか。なぜ生で刺身を食べるのか。普段当たり前のようにやっていることだからこそ意識しにくく、疑問にも思わないことは案外歴史を知ると答えが載っている。
目の前にある食事を慢然と口に運んでいることを思い出させてくれる本だった。
オーガもこう言っている。
たまにまともなことを言うだけで面白い男。
まぁそれは置いといて普段当たり前に食べている和食だからこそ知っておきたい和食の「なぜ」への解答が大体そろっているような本なので和食好きは読んでおいて損はないかもしれない。