山下達郎のコンサートに行った。今回が初めて。
2018 6/28 NHK ホール、会場の前に行くともう大分人が集まっていた。 年齢層は 40 代〜50 代が多め、20 代、30 代はちらほらという感じ。 NHK ホールに音楽を聞きに行くというのもそういえば初めてな気がする。
NHK ホールは普段は紅白や N 響のコンサートなどで使われるが、ライブ会場としても使われていてベテランのアーティストが演奏していたりする。
自分が山下達郎を聴き始めたのは割と最近で、和モノの 80 年代 AOR の再発物を聞くようになってから山下達郎もよく聞くようになった。 たまにレコード屋に行っては中古のレコード棚から「や」行を探し、少しずつ集めていた。
山下達郎のレコードを買って毎回思うのは、驚くほど音がいいということ。80 年代にプレスされたレコードとは思えないほど音の抜けがよくて達郎を聞いている間だけ耳の通りがよくなる気がするくらいだった。
そして 80 年代に全盛期を誇っていたアーティストが今でも活動しているということ自体がある意味驚きなのだけど、一番驚いたのは山下達郎が今もなお全盛期だったことだ。
経験豊かなアーティストが加齢や喉の酷使で以前通りの声が出ないのはよくあることなので、自分も少し覚悟をして聞きにいったのだけどその心配は不要だった。
1 曲目、Sparkle の第一声が NHK ホールを響かせた時 80 年代の風が吹いた。
「声が戻って来ている。35 歳ぐらい」
と曲の合間の MC で語っていたのは本当で、何度と無くレコードで聞いたあの声がまさに響いていた。目を瞑ったら音源をそのまま流しているんじゃないかと思うぐらいまったく変わっていないあの声だ。
この感動はちょっと文字では伝えきれないけど、山下達郎のような声を自分の音楽のアイデンティティとしているようなアーティストが全盛期の輝きを取り戻しているというのは、比較的維持することが可能な演奏技術よりよほど心に来るものがある。声というのは非可逆なもので、才能ある素晴らしい歌手が全盛期の声を取り戻せないのを何人も見てきただけに。
近年 Future Funk や Vaporwave 等の流行もあって久しいけど、その界隈からはサンプリング元として神のような扱いを受けている山下達郎が現役バリバリでいらっしゃるので行ったことない界隈の人はマジで一回行ってほしい。
山下達郎ももちろんだけどバンドメンバーも全員一流だった。 今まで結構な数のライブを見てきたけど、全員が全員うまいというのはなかなかない。 全員山下達郎の慧眼にかなったメンバーだから当たり前といえば当たり前だ。バックコーラスにしれっと国分友里恵がいるのもすごい。
あと NHK ホールの会場としてのよさも大きかった。席は残念ながら3階席の後方だったけど、ハイハットの一刻みの強弱が手に取るように聞こえ、どれか一つの楽器が潰れることなく全てがはっきりと聞こえるライブは初めてだった。山下達郎のセッティングも完璧なんだろう。リハーサルに 1 ヶ月かけて、レポートで 10 枚事細かにダメ出しするような完璧主義者が NHK ホールの全席の音響をチェックしていないはずがない。
MC も完全に音楽オタクという感じでよかった。ベロシティとか ProTools とか、スタジオミュージシャンに譜面渡して演奏してもらうのが大変だった話とか、好きなルーツ洋楽アーティストの単語とかポンポン飛び出てくる。本当に音楽が好きなんだなぁという感じで(オタク特有の早口で)楽しそうに話されるので永遠に聞いていたくなる。
Japanese Funk とかシティポップと最近はジャンル付けもされて海外でも再評価の著しい山下達郎だけど、日本語とか英語とかこだわらず自分の信じる良い音をやり続けた結果みんなハッピーになるというとてもいい話を実体験出来るライブなので、みんな一生に一回は山下達郎行きましょうという気持ちになった一夜だった。